アカデミックセッション/as1b

アカデミックセッション

生命の理解へアプローチするオミックスの定量と統合
座長: 川路 英哉 (理化学研究所)
二階堂 愛 (理化学研究所情報基盤センター バイオインフォマティクス研究開発ユニット・ユニットリーダー)
 
ID AS1b 日時 2013/9/4(水) 13:10-14:40 会場 B
概要 生命現象を理解するため、ゲノムに書き込まれている情報やそこから生成される分子を同定し定量する試みが続けられてきました。本セッションでは、NGSを用いることで網羅的な同定や定量が可能であるDNAやエピジェネティックマーク、RNA等の情報を利用し生命の複雑さへアプローチする最新の研究について紹介していただきます。
  • 「FANTOM5 project: 一分子シーケンサで測定するプロモータレベルでの発現地図 」
    川路 英哉 (理化学研究所)
  • ゲノムには生体を構築するために必要なすべての命令が書き込まれ
    ている。受精卵から卵割、嚢胚形成、着床を経由し個体として生存する為に必要な全ての臓器を構成する命令に加え、一生涯に必要となるあらゆる種類の細胞に対する、その機能や数、場所、分化タイミングに至るまでの命令である。これらは細胞内外における複雑なシグナル伝達経路を通じて伝えられるが、基底をなすのは命令の分子的な読み出し機構と位置づけられる転写である。我々は一分子シーケンサであるHeliScopeとCAGE法を用いてヒト転写開始点の網羅的かつ定量的なプロファイリングを行い、組織として150種以上、癌のサブタイプを代表する細胞株として200種以上、これまであまり網羅的なプロファイリングの対象にされてこなかった初代細胞(生体から採取した組織から分離した細胞, primary cell)や初代培養細胞として200種以上、における転写状態と複雑なプロモータ活性を明らかにした。
  • 「植物の翻訳制御機構研究 ~個別遺伝子解析から次世代シーケンサーを用いた網羅的解析へ~ 」
    松浦 秀幸 (大阪大学大学院薬学研究科)
  • 植物細胞におけるmRNAのタンパク質への翻訳は、様々な環境刺激に応答して迅速に、かつ適切なタイミングでグローバルに変化し、ストレス応答や細胞分化、形態形成といった高次機能の重要な分子基盤となっていることが明らかにされつつある。我々はこれまで、高温ストレス下の植物細胞におけるmRNAの翻訳制御機構の解明研究に取り組んできた。個別の遺伝子の翻訳制御に焦点を当てた解析からスタートし、DNAマイクロアレイを用いた翻訳制御の網羅的な解析、さらにはin silico解析を利用したシス制御因子解析へと研究を展開してきた結果、正確な転写開始点(つまりは5’非翻訳領域の5’端配列)とmRNAの翻訳制御を関連づけることの重要性を認識するに至った。そこで現在我々は、転写開始点と翻訳制御を関連付けながら網羅的に解析するために次世代シーケンサーを利用し、植物における遺伝子発現制御機構の複雑さにアプローチする試みを始めている。
  • 「細胞の分化・誘導に関わる発現ポテンシャル解析 」
    荻島 創一 (東北メディカル・メガバンク機構 医療情報ICT部門 ・講師)
  • 発生・分化はポテンシャルの谷に沿って進むというエピジェネティックランドスケープの概念がワディントンにより提唱されて以来、カウフマンは細胞の種類を 遺伝子調節ネットワークが決定するアトラクターとして捉えるなど、細胞の分化・誘導をランドスケープ上の細胞状態の遷移として捉える見方がある。本発表では、細胞の分化・誘導における細胞状態の安定性を定量的に評価するため、網羅的な遺伝子発現データに基づいた、定量的ワディントンエピジェネティックランドスケープ(qWEL)について提案し、その算出と目的細胞への細胞状態の遷移確率の検討について紹介する。
  • 「メダカのエピゲノムから分かった進化と制御」
    曲 薇 (東京大学大学院 新領域創成科学研究科 ・特任助教)
  • 我々は最近、近隣CpG部位がメチル化された場合、ヒトゲノム配列のSNP率が約50%増加したことを発見した。この結果を確かめるために、メダカの初期胚を含める六つのライブラリーの一塩基解像度のメチロームを同定し、種を通じて保存されているDNAメチル化とDNA配列の進化速度との関連性について調べた。さらに、魚類の全ゲノム重複によって形成されたパラログ領域において、エピゲノムはどのような進化をたどり、制御機能を獲得したかを明らかにすることを試みた。