アカデミックセッション/as1c

アカデミックセッション

非モデル生物シーケンスから変わる生命観
座長: 荒川 和晴 (慶應義塾大学先端生命科学研究所政策・メディア研究科・特任講師)
松波 雅俊 (北海道大学環境科学研究院・研究員)
ID AS1c 日時 2013/9/4(水) 13:10-14:40 会場 C
概要 三十数億年繋がれて来た生命の襷。幾多の変化の中、生物は、突然変異などによって常に「例外」を創り続けることでさまざまな環境、そしてその変化に適応してきた。このように、生命の本質の一つは「例外」による適応にあるが、これまでの分子生物学はモデル生物による生命の統一的理解に偏重してきたきらいがある。だが、NGS技術の進歩によって今やその「例外」たる非モデル生物の研究が加速度的に進んできている。本セッションでは非モデル生物解析の最前線に立つ4名の研究者を通して、新たな生命観を紡ぎたい。
  • 「進化と発生の関係性を探るべく、de novoカメゲノム」
    入江 直樹 (東京大学理学研究科・動物発生学教室・准教授)
  • ワークショップ「非モデル生物シーケンスから変わる生命観」ですが、本当に生命観が変わるんでしょうか。カメが?進化と発生の関係性解明という長年の古典問題が、ここ数年で大きく進展しつつあります。小さな一歩ではあれ、これが生命観を変える事につながっていくと考え、取り組んできた研究を本音でお話します。また、次世代シーケンサー現場の会らしくde novo ゲノムコンソーシアムの立ち上げからプロジェクト完了までのテクニカルな壁などについてもお話し広く意見交換できればと思っています。」
  • 「ポスト・ドラフトゲノム研究 — エンドウヒゲナガアブラムシの例」
    重信 秀治 (基礎生物学研究所・准教授)
  • 環境応答や生物間相互作用を研究するための新興モデル生物として注目されている昆虫のエンドウヒゲナガアブラムシ Acyrthosiphon
    pisum は、国際コンソーシアムにより、ドラフトゲノムが2010年に報告された。しかし、ゲノムアセンブリや遺伝子アノテーションの質は完璧にはほど遠い。私はRNA-seq解析や完全長cDNA解析などから、これまでアノテーションされていなかった新規の遺伝子ファミリーを発見した。また、それらが共生細菌を保有する共生器官細胞で特異的に発現すること、さらにはアブラムシと細菌の共生に重要な役割を果たすことを見いだした。
  • NGS技術の進歩のおかげで、今後、そこそこの長さにつながったゲノムアセンブリに、ほどほどの品質のアノテーションのついた非モデル生物のゲノム情報が数多く生み出されるに違いない。このような「ドラフト」データにどう向き合うのか、ひとつのケーススタディとして、上記アブラムシの研究を紹介したいと思う。
  • 「ゲノムに刻まれた食虫植物の進化」
    福島 健児 (基礎生物学研究所・大学院生)
  • 福島 健児(1,2)、Likai Mao(3)、今井 飛将(4)、西山 智明(5)、野澤 昌文(6,7)、住川 直美(1,2)、笠原 雅弘(4)、柴田 朋子(1)、重信 秀治(1,2)、Xiaodong Fang(3)、長谷部 光泰(1,2)
  • 1. 基礎生物学研究所、2. 総研大・生命科学・基礎生物学、3. BGI-Shenzhen、4. 東京大・新領域・情報生命科学、5. 金沢大学・学際科学実験センター、6. 国立遺伝学研究所 ・生命情報研究センター、7. 総研大・生命科学・遺伝学
  • 特殊化した葉によって動物を捕獲・消化・吸収できる植物は食虫植物と呼ばれ、これまでにおよそ11科600種が記載されている。食虫性は、非食虫植物が貧栄養環境へと適応する過程で進化したと考えられているが、消化酵素をはじめとする新奇形質がどのようにして生じたのかは明らかになっていない。食虫植物フクロユキノシタ (Cephalotus follicularis) は、食虫に適した捕虫葉と光合成に適した普通葉を個体内で作り分け、食虫性の進化を探るのに適した性質を備える。本研究では、イルミナおよびPacBioリードからフクロユキノシタゲノム (2 Gbp) をアセンブルし、トランスクリプトーム比較から捕虫葉の形態と機能を担う遺伝子系を推定した。さらに、大規模シークエンスから見えてきた消化酵素の進化について紹介したい。
  • 「アゲハチョウのゲノムデータベースを作るためのNextera改善」
    尾崎 克久 (JT生命誌研究館・研究員)
  • アゲハチョウのゲノムサイズは約220MB程度なので、1ランで8GBのスループットを誇るilluminaMiSeqなら、数ランで全ゲノムを解読することが不可能ではないはずである。しかも、Nexteraライブラリー調整キットを使うと、簡便かつ短時間で作業が完了する。ゲノムサイズの小さい昆虫の全ゲノム解読が、小規模な研究室単独でも次々行われるようになると予想されるので、効率的で効果的なゲノムデータベース・プラットホームの構築を目指している。
    しかし、実際にNexteraでライブラリーを作成すると、短いDNA断片が大量に含まれMiSeq500サイクルキットの250bpペアエンドという性能を活かしきれない問題が起こる。illuminaのプロトコールではAMPureの濃度を調整することで対応することになっているが、この方法では十分な効果は得られない。本研究で、ChromaSpinカラムを使って5分間遠心するだけという簡単な作業で、効果的に低分子断片を除去できることを確認した。